(文:フードライター 団田芳子)
店主の児玉敏彦さんが、炭火の前で顔を真っ赤に火照らせて鳥を焼く姿は、まさに“孤高の焼き鳥屋”と言った風情だ。
炭はこの店の炭床に合わせて、特注で焼いてもらった最高級・紀州備長炭だ。
パラパラと落とす塩は、何十種も試した上で、鳥の部位毎にコレと決めたものを使い分けている。
鳥は、半生を掛けて食べ続け「これぞ」と惚れ込んだ秋田の高原比内地鶏だ。それを一番美味しい状態に焼き上げる為に、ひと串入魂、いま風に言えば“全集中”で焼き台の前に立つ児玉さん。炭火の朱に染まったその顔は鬼の形相…いや、頑固一徹な“孤高の焼き鳥屋”というキャッチフレーズを冠したくなる姿なのだ。
児玉さんは、鳥が好きすぎて、焼き鳥屋になった元建築屋さんだ。そのユニークな経緯にご興味あらば、拙著『私がホレた旨し店』(西日本出版刊、電子書籍もあります)に詳述しておるので、ぜひお手にとっていただくとして。ここでは、その“孤高”っぷりを述べたいと思う。
「孤高の人」とは、超然と、ひとり高い理想を掲げ、邁進し、貫き通す人の意。
児玉さんの掲げた理想は、「最高に美味しい鳥を食べてほしい」という単純明快なもの。しかし、単純なものほど奥が深い。
明快だけど実現するのは難しい。
それを児玉さんは、ただ真っ直ぐに形にしてきた。
鳥好きの建築屋さんは、秋田県比内町に半年ばかりも住み込んで、地元の人から料理法を学び、東京の専門店で実地訓練を受け、2003年、地元香里園に焼き鳥屋を開いた。10年後、常連客も付いた店を北新地に移転したのは、東日本大震災で比内地鶏が大阪に届くのに1日多く時間が係るようになったから。1日でも早く新鮮な鳥を手に入れるために、地の利の良い大阪市内への移転を敢行したのだ。そして、何とゴーストタウン化する日曜日の北新地で、ひとり営業をしている。休むのは鳥の入荷がない月曜日に、というわけだ。
それもこれも、「最高に美味しい鳥を食べて欲しい」から。
メニューを開けば、串、鍋、1品、ご飯もの…と豊富な品書きのあとに・・・・・。
何故か顔写真がずらり。客?いえいえ。店で使っている酒、醤油、味醂、昆布などなどの生産者の顔写真。自ら会いに出掛けて、この人の作るものなら間違いない!と信じたもののみを使っているという証しだ。
たぶん延べ1万軒以上の飲食店を取材してきた私も、こんな妙なオヤジは見たことがない。「美味しいものを食べさせたい」とは、料理人なら誰でも思うことだが、普通はもうちょっと、数字を考慮するのだが。
「金儲けより、良いもんをきちんと出したい」「手間が掛かっても美味しほうを取りたい」「店の都合より、美味しいもんを出したい」
純な素人臭さを残したままの鳥好きな妙なオヤジは、こうして“孤高の焼き鳥屋”になった。
その素顔は、奥さんの“ミッチャン”が大好きで、二人の息子を立派に育てた良き家庭人であり、気の良い美味しいもん好きで。がむしゃらに突き進んでいるようで、案外、チマチマと悩んでいたりする可愛い人でもある。
こんなオヤジが焼く焼き鳥は、ハッと胸を突くほど旨い。そしてきりたんぽ鍋は、ズンと心に響くほどしみじみ旨い。あ、卵も比内地鶏を使った親子丼も。さらに、忘れちゃならんのが、和食修行してきた長男さんの手による、目にも彩な一品もいいし…。きりがないのでこの辺で。ともあれ行ってソンなし、と保証します。
自ら現地に行き、自らの目で見て、自らの舌で確認した本当の「本物の食材」のみを使用
比内地鶏や野菜、米等の食材はもちろんのこと、
炭や塩、料理に使用する水にいたるまで、すべてにこだわりました
写真:下村亮人(下村亮人写真事務所)
誰もが思わず唸る・・・
高原比内地鶏のもも一枚焼き
天然記念物の比内鶏、
その特徴と血筋を唯一色濃く受け継ぐと言われる
高原比内地鶏の価値、真価、美味しさなど、
すべてはこの一枚に凝縮されていて
言葉は要らない。
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写真:下村亮人(下村亮人写真事務所)
遥か昔から秋田で食べ続けられてきた
昔ながらのきりたんぽ鍋零下10度の冬の秋田に行かなくても秋田以上に美味しいと言われる、ここでしか食べられない昔そのままの無添加のきりたんぽ鍋です。
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写真:下村亮人(下村亮人写真事務所)
いらちで行列嫌いの大阪人が
90分待ってでも食べたいと言われる、
究極の親子丼高原比内地鶏のもも肉と卵3個を使い、親父が皮面をこんがりふっくらと焼き、息子が半熟トロトロに仕上げる二重の意味での親子丼、他では決して真似る事が出来ないここだけの味です。
※ご飯類はオーダー後に洗米・浸漬・炊飯・蒸らしで90分かかります
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鶏好きが高じて従来何処にも無かった理想の鶏料理屋を目指して・・・。
昔、特別でなく当たり前に食べられていた無添加の活地鶏料理を再現しようと、
平成14年4月25日京阪沿線の香里園にて開店しました。
「店主、自分の足で現地に行き、自分の目で見て、自分の舌で確認した」
最高の素材の鶏、安心安全な食材、昔ながらの無添加の調味料などを求めて、
日本全国の生産者さんを飛び回り集めてきました。
誰にも真似できない炭焼も長年かけて編み出しました。
お陰様で縁あって平成26年9月26日北新地に移転致しました。
長男は京都五条はり清さんにお世話になり京料理を12年修業して、
次男は美術大学を卒業して兄弟揃って店に入ってくれました。
お客様が求められる最高の鶏料理を提供する為、家族みんなの持っている
知識や技術を伝承して後世に残していきたいと思っています。
活地鶏料理 北新地ひないやをご贔屓にして頂いている皆様、
今後とも是非宜しくお願い致します。
店主 児玉敏彦
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ひないやの力に少しでもなればと調理学校を卒業し、
和食の道へと進み、京都で12年修行して参りました。
2019年1月より親父の横に立ち、新たな気持ちで学んでおります。
焼き1本1本に対しての情熱、愛情のつまったこだわり
それらを継承し、自分の経験と一緒に融合させて発展する事こそが、
親孝行であり使命だと思っております。
比内地鶏の魅力をより多くの方々に伝えるべく、日々精進してまいります。
料理長 児玉健太
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住 所
〒530-0002
大阪市北区曽根崎新地1-10-16 永楽ビル6階 -
営業時間
17:30~23:00
(最終入店 22:00) -
定 休 日
月曜(祝日も休み)